玉石混合してますよね、情報が。
「放射線によって傷ついた遺伝子は、子孫に伝えられていきます」。表紙にこんなタイトルを掲げた生活情報誌「クロワッサン」に、ツイッターで批判が相次ぎ、クロワッサン側は、「不適切な表現だった」と公式サイトで謝罪した。
批判を呼んだタイトルは、生命科学者の柳澤桂子さんがインタビューで発言したものの一部を抜き出したものだ。柳澤さんは、三菱化成生命化学研究所の主任研究員を長く勤めた後、科学エッセイなどを執筆している。
■ツイッターで批判が相次ぐ
このタイトルを掲げたクロワッサン誌2011年6月25日発売号の表紙が、発売元マガジンハウスの公式サイトにアップされると、ツイッター上で次々に指摘が上がった。
「クロワッサンの表紙 これはいけんやろ」「こんな言葉が書店に平積みされると思うと気持ちが暗くなる」「原爆の被爆者も正常に子を生している」…
いずれも、こうした表現が原発事故の被曝者らへの偏見を生むというものだ。
特集記事によると、柳澤さんは、原発事故を知って、「とにかく怖かった」という。放射線が原子に当たると電子が引き離される現象が起きるため、人の細胞内でも複雑な化学反応が起きる。その結果、強い放射線を浴びなくても細胞に変化が起き、「いのちの総司令部」というDNAも影響を受けてしまう。
それは、書き込まれた情報が変更されたり、情報テープが切断されたりするほか、細胞分裂のときにはDNAの傷もそのままコピーされていくことだとする。
これは発がんにもつながるが、柳澤さんは、こうも言うのだ。
「表面にはあらわれないDNAの傷が、子孫に伝えられていきます」
クロワッサン誌のタイトルは、この部分を抜き出したものだ。
とはいえ、柳澤さんは、すぐに影響するとは言っておらず、科学者らしく冷静な見方をしている。
■「何万年か後に突然変異の可能性」だった
「長い間にDNAの損傷が人類の遺伝子プールに蓄積され、何万年か後に突然変異が頻発するかもしれません。どのような変異なのかは予想もつきません。それが一番、恐ろしい」
そのうえで、柳澤桂子さんは、細胞分裂が盛んな乳幼児や妊婦は少しでも放射線を浴びないようにと呼びかけている。
クロワッサン誌では、別の専門家の意見も紹介している。慶大医学部放射線科講師をしている近藤誠さんのインタビュー発言だ。そこで、近藤さんは、動物実験では遺伝子変異の可能性はゼロではないとしたものの、「人間の場合のリスクはデータとして検出できないくらいわずかなもの」だと言っている。つまり、被曝した後に子どもができても、その子どもへの影響はほとんどないということだ。
とはいえ、タイトルに発言の一部だけが使われたため、ネット上で憶測を呼んでしまった。
クロワッサン誌は、公式サイト上で2011年7月1日夕、お詫び文を掲載し、「不適切で配慮を欠いた表現」があったとして謝罪した。
二階堂千鶴子編集長は、取材に対し、「不適切な表現で誤解を招いてしまったことは、申し訳なく思っています。次回号でも、お詫びの言葉を載せたいと考えています」と話している。
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