2012年4月21日土曜日

てんかん無申告 波紋

たくさんの人が患っているのも事実で、ほとんどの人はちゃんとしている。こういう事故が起こると病気自体を理解出来ない人がいるのも多いことがわかる。難しいね。


祇園で起きた19人死傷事故で、暴走した軽ワゴン車を運転していた呉服店社員・藤崎晋吾容疑者(30)(死亡)が、持病のてんかんを申告せずに運転免許を更新していたことが波紋を広げている。病気と事故との因果関係ははっきりしないが、病気や患者そのものを中傷する電話が患者団体に相次いでいるという。一方、「無申告」については法改正の動きも出てきた。

■「正しい理解を」

 12日の事故発生後、てんかんの患者や家族など約200人の会員でつくる日本てんかん協会府支部(京都市上京区)に、一般の患者や病気そのものを非難する内容の心ない電話が何本も入った。同協会(東京)のホームページにはアクセスが殺到し、その後、閉鎖された。

 同支部関係者は、藤崎容疑者が先月に運転免許を更新した際、持病を申告していなかったことに「他の患者に迷惑がかかるのがわからんのか」と怒りが収まらない。「病気を隠して免許を得ていた」という事実が一人歩きし、「てんかん患者の運転は危険」との偏見につながっているからだ。藤崎容疑者は同支部には加盟していなかったという。

 道交法施行令では、2年間発作がなく、今後も一定期間に発作が起こる恐れがないなどの診断を受ければ免許の取得・更新が可能。

 同支部では、患者が運転免許の取得や更新を行う際は、正しく申告することなどを訴えるポスターを府内の病院に掲示しているほか、専門医を招いて治療法や運転の注意を促す講演会などを開催しており、国に対しても、交通運賃の減免制度や、患者の雇用を促す制度の整備などを求める街頭署名も積極的に行っている。

 日本てんかん協会(東京都)は事故翌日の13日、「てんかん患者が社会的責任を果たさなかったことは極めて遺憾。無申告での運転免許取得は絶対しないよう強く訴える。法律を守る患者への偏見が助長されないことを心から願う」との声明を出し、同支部関係者も「大半の患者は法を守り、会員も免許取得には非常に慎重だ。実態を知らない中傷に心が痛む」と嘆いている。

■有識者会議設置へ

 祇園の事故から1週間を迎えた19日、警察庁は、持病がある人が起こす重大事故が相次いでいることを受け、免許の取得・更新時に持病を申告しなくても罰則がない現在の道交法を改正することも視野に入れた有識者会議を設置する方針を明らかにした。

 この動きの発端となっているのは、昨年4月、栃木県鹿沼市で、てんかんの持病がある男(服役中)が運転するクレーン車が小学生の列に突っ込み、6人が死亡した事故で、男は、てんかんを申告せずに免許を取得し、事故時は発作で意識を失っていたとされる。

 鹿沼市の事故では、宇都宮地検が危険運転致死傷罪(最高懲役20年)の適用を「条文上の危険運転にはあたらない」と見送って自動車運転過失致死罪(同7年)で起訴し、宇都宮地裁で懲役7年の実刑判決が確定した。これに対し、遺族らは祇園の事故が起きる3日前の今月9日、てんかんの持病を申告せずに免許を取得して起こした事故などに危険運転致死傷罪の適用を可能とする刑法改正などを求め、法相らに約17万人の署名を提出した。

 事故で次男卓馬君(当時11歳)を亡くした大森早折さん(36)は祇園の事故も踏まえ、取材に「患者さんも加害者になってからでは遅い。国は早急に法整備をすべきだ」と強調する。

 一方、9日の要請について同協会は、「てんかんだけを対象に厳罰化を求める内容で、病名による差別を助長されかねない」との懸念を表明している。

■てんかん 大脳の神経が一時的に過剰に活動する発作を繰り返す病気。発作の際、10分の1秒程度から数分間、意識障害が起きるが、その程度には個人差があり、完全に意識を失うケースのほか、話は聞こえても認識ができないなどのケースもある。患者は全国で約100万人と推定され、適切な治療で大部分の発作はコントロールできる。

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