ずっと緊張しっぱなしだと、ミスをしますからね。適度に緩められるところは緩めていただきましょう。
キリン、ゾウ、松の廊下…。東京電力福島第1原発の施設や、事故収束作業に投入された特殊車両などにユニークな愛称が付けられている。専門家は「愛称で呼ぶことで現場の作業員の間に一体感が生まれる効果がある」と分析するが、過酷な作業現場でささやかな“癒やし”を求める心理も浮かび上がる。(原子力取材班)
長さ約21メートルの車体に、水を出すことができる高さ約70メートルのアームを持つ世界に3台しかないコンクリートポンプ車。遠隔操作で原子炉建屋の燃料貯蔵プールに放水したり、アームの先端部に取り付けたカメラでプール内を撮影することができる特殊車両で、東電は、その巨大さから「マンモス」と名付けた。
最初に投入されたコンクリートポンプ車は一回り小さい「キリン」。理由は、高さ約58メートルのアームを伸ばした姿が「キリンに似ていたから」(東電)。
どうして動物の名前なのか。東電は「動物ならイメージがつきやすく、現場で区別しやすい。連絡ミスを防げる」と説明しており、キリンの後に投入された一回り大きな車両には「ゾウ」と命名した。
中京大学の向井希宏(まれひろ)教授(産業心理学)は「愛称は記号などよりもイメージがしやすく、好き嫌いがないものが適している」と指摘。工場の産業用ロボットに女性の名前などが付けられることもある。
過酷な作業が続く現場だけに、東電は「緊迫した中で、雰囲気を和らげるという意味もある」と、二次的効果にも期待。向井教授も「サッカーの『なでしこジャパン』のように、愛着の持てる名前を付けることで、現場に一体感が生まれる効果がある」とする。
一方、同原発の原子炉建屋とタービン建屋の間には、「松の廊下」と呼ばれる幅約4メートル、長さ約45メートルの通路がある。
松の廊下といえば、播州赤穂藩主の浅野内匠頭(たくみのかみ)長矩(ながのり)が江戸城内で起こした刃傷沙汰の現場。記者会見の説明でもたびたび使われており、報道陣にはおなじみの「用語」となっている。
東電は「細長く、松の廊下に似ていることから定着した」と説明するが、命名者や正確な由来は不明だ。東電は「現場の作業員は『マイプラント(自分の発電所)』という意識を持っている。『癒やし』のイメージはないが、長年親しんだ通称だけに、現場には愛着がある」と話している。
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