2011年6月6日月曜日

O104、国内対応は…なぜモヤシから? 動物の堆肥で拡大か

対岸の火事と捕らえず、きちんとした対応策を考えてくださいね。

 広がりを見せる腸管出血性大腸菌「O104」。日本の専門家は、動物の堆肥を通じて、モヤシなどの野菜類に感染が広がった可能性を指摘している。日本でも空港などで、輸入食品の監視強化の準備が進められるなど影響が出てきた。

 ■新たに検査追加

 厚生労働省監視安全課によると、感染源の可能性があるモヤシなどのスプラウト(発芽野菜)類の欧州から日本への輸入はない。ドイツからはごく一部の生鮮野菜の輸入があるだけだ。ただ、空港や港などの検疫所では、これまで輸入肉や輸入野菜について、O157とO26の検査を行っていたが、近くO104の検査も追加する予定という。

 人への対応はどうか。人から人への感染力が高く、日本に持ち込まれると感染拡大の恐れがあった新型インフルエンザは、海外からウイルスの持ち込みを防ぐために感染流行地から日本へ来る人の健康チェックがされるなどの「水際作戦」がとられた。

 厚労省結核感染症課では「新型インフルとは違い、水際作戦は必要ない」と話す。腸管出血性大腸菌は主に食べ物を通じて感染する。

 検疫法は、国内にもある病気として、腸管出血性大腸菌を入国時の検疫対象にしていない。ただ、感染症法では腸管出血性大腸菌の患者を診断した医師は、ただちに最寄りの保健所に届け出るように定めている。厚労省では「ヨーロッパから帰国して、血便や下痢などの症状が出た人は医療機関を受診してほしい」と注意を呼びかける。

 ■種に付着なら…

 通常、腸管出血性大腸菌は、牛などの動物の腸内に生息している。なぜ今回モヤシなどの野菜類が感染源として疑われているのか。

 「畑で使われる堆肥(たいひ)がポイント」と話すのは、日本食品衛生協会の高谷幸常務理事。腸管出血性大腸菌が含まれた牛の糞(ふん)などが堆肥として使われていることがあるからだ。米国では、地面に落ちたリンゴを使ったリンゴジュースでO157の食中毒になったケースがあるという。

 国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部の工藤由起子第2室長によると、今回原因として疑われているモヤシをはじめ、アルファルファといった発芽野菜は「欧米では時折、食中毒の原因食材になる」という。

 堆肥が使われた畑で土やほこりとともに採取された発芽野菜の種の表面には、腸管出血性大腸菌が付着する可能性がある。通常は発芽前に種を加熱や薬剤などで殺菌するが発芽率は落ちる。殺菌しきれなかった種から発芽すると、全体に菌が付着して水の洗浄では菌を落としきれないことがあり、一定量以上の菌が繁殖した野菜を口にすることで食中毒が発生する。

 平成8年に発生し多数の患者を出したO157の食中毒では、カイワレダイコンの関与が疑われた。工藤室長は「モヤシも他の発芽野菜と同じような形で食中毒になることは考えられる」と話している。

 ■腸管出血性大腸菌

 毒素を産生し、激しい腹痛や下痢、血便を招く恐れがある大腸菌。急性腎不全などにつながる溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こすこともある。菌の表面にあるO抗原の違いによって、見つかった順に「O104」「O111」「O157」などと分類。厚生労働省によると、腸管出血性大腸菌の患者は年間約4千人の届け出があるが、O104は国内ではこれまで確認されていない。

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