いろいろな理由があって、完全に元に戻るには時間がかかりそう・・・
東日本大震災から2カ月半を過ぎ、当初の物資不足を耳にすることは少なくなった。しかし、福島県の学校には今も質・量とも不十分な“不完全給食”を食べ続けている子供たちがいる。原発事故、予算不足、給食センターの損傷…。原因はさまざまだが、保護者らからは行政の対応を批判する声も上がっている。 5月24日昼過ぎ、福島県南相馬市の鹿島小学校。4年生の給食の時間を見学した。
この日の献立はハンバーガーとゼリー。子供たちは直径約10センチの肉とレタスを自分でパンに挟み、「肉汁がおいしい」などと笑顔を見せた。中には配膳から5分足らずで食べ終えた男の子も。担任教諭に「おかわりある?」と尋ねたが、返ってきた言葉は「売り切れ」。「まだおなかに空きがあるんだけどな」と頬を膨らませた。
23日「おにぎり・煮豆・カットグレープフルーツ」▽25日「梅おにぎり・のり・豚汁」▽26日「パン・フライドポテト・小魚・バナナ」▽27日「五目ずし・ゆで卵・メロン」-。最近1週間の献立だ。品数や食材数は本来からほど遠いが、同校の門馬正純校長は「これでもかなり充実してきた。地震当初はおにぎりとヨーグルトだけなどだった」と振り返る。
完全な給食が出せないことについて、市教育委員会は複数の理由を挙げる。
第1は調理能力の不足で、背景は少し複雑だ。
南相馬市は小高・原町・鹿島の3行政区から成るが、原発事故で小高・原町両区の大半が原発から半径30キロ圏内の避難区域に指定された。子供の安全に配慮した市は、両区内の学校授業を、30キロ圏外の鹿島区内の各学校で実施。必然的に、鹿島区内の学校に通う子供が急増した。
震災前、鹿島区の学校給食は、1300食の調理能力を持つ給食センターが担ってきた。しかし、現在では必要な給食数は約2700食に増えた。さらに小高・原町両区には給食センターがなく、各学校が自前の調理室で給食を作ってきた経緯もあり、調理能力の早期改善は見込めない。
予算の問題もある。市教委は被災した保護者に配慮し、現在、給食費を徴収していない。その代わり市が1食200円を補助しているが、市教委は「本来の給食は1食280円以上。金額的に十分な献立を用意するのは厳しい」という。
一方、同県いわき市でも、パンと牛乳にハムやチーズなど1品を加えた献立が続いている。市内8カ所の給食センターが地震で損傷し、復旧していないためだ。市教委は「6月ごろから、調理した給食を提供できるよう急いでいる」と説明する。
南相馬市教委は「保護者からは『子供が栄養不足になる』『そんな給食が続くなら弁当を持たせたい』などのお叱りも受けている」と明かす。しかし、弁当については「子供の間に格差が生まれてしまうため、お断りしている」という。
こうした行政に対し、市民からは「無策」だと批判する声も上がっている。
同市の男性(37)は「調理能力が不足しているなら、外部に委託すればいい。予算に関しても、子供の成長はお金に換算できず、補助の増額や育児支援団体に資金援助を求めるなど、方法はあるはずだ」と指摘。別の男性(28)も「外部委託しないのは、調理師の職を守るためではないか」と疑念を述べた。
こうした声に、市教委の担当者は「外部委託は衛生管理や食品アレルギー対策などが不十分になる恐れがあり、簡単にはできない。予算については、市の財政が厳しく、やむを得ない。われわれも支援物資を給食用に優先的に回してもらうなどの努力を続けている」と苦しい胸の内を明かした。同市は2学期以降の完全給食の実施を目指しているという。
0 件のコメント:
コメントを投稿