少しでも可能性があるならば、実行してみていいのでは?何もしないよりは、いいでしょう!
旧ソ連のチェルノブイリ原発事故で汚染された土壌浄化のため、現地で試みられている菜の花を使った土壌浄化の、日本への転用に向けた準備作業が始まった。農林水産省では現地・ウクライナに幹部らを派遣。菜の花の放射性物質(放射能)吸収に関するデータ収集などに着手した。ただ、東京電力福島第1原発事故の被災地に応用するには、早くも課題が見えている。
「あちらにはデータが山ほどある。日本の研究者が現地の研究機関などから成果を学び、日本に合わせ研究することになっている」
菜の花による浄化実験が行われているウクライナ北部のナロジチ地区を視察した篠原孝農林水産副大臣は4月末、そう明らかにした。すでに日本の研究者が現地入りしている。
ナロジチはチェルノブイリ原発から西に約70キロ。1986年の事故から25年を経た現在も、食用作物の作付けが地区の95%で禁止されている。浄化実験は日本のNPO法人「チェルノブイリ救援・中部」(名古屋市)が2007年、地元の大学などと連携し始めた。
植物は成長のために、土壌中の水分に溶けたカリウムを吸収する。菜の花やヒマワリは、植物の中でもカリウムの吸収量が多いことが分かっている。浄化実験は、カリウムとセシウムの化学的性質が似ていることに着目。菜の花が、カリウムと混同して放射性セシウムを吸収することを利用した。
実験では、収穫した菜種でバイオディーゼル油を、搾りかすや葉などからバイオガスを精製。いずれからも放射性物質は検出されなかった。
また、1年目に菜の花を植え、2年目にライ麦、3年目にソバを栽培したところ、収穫物に含まれる放射性物質は汚染後に何もしなかった土壌でできたものと比べ3年間で半分以下になったという。土壌中の放射性物質は時間をかけて溶け出すため、4年目に再び菜の花を植えるというサイクルを繰り返している。
菜の花や麦は同じ土壌で毎年栽培すると生育不良になる「連作障害」が起きる。同NPOの河田昌東(まさはる)理事(71)は「菜の花と麦などを交互に育てることで次第に土壌の汚染レベルも下がる。連作障害を避けながら新しい農業ができ、麦は家畜の飼料などに利用できる」と期待を寄せる。
ただ、課題もある。茎や葉、菜種の搾りかすの処理だ。それらをバイオガスにしても放射性物質を含む排水が出る。排水を吸着剤に吸着させて低レベル放射性汚染物にする実験には成功しているが、実用化には至っていない。
また、日本と汚染の状況も異なり同じ成果が出るかも未知数だ。ナロジチの菜の花畑の地表の放射線量は1時間当たり0・6~1・0マイクロシーベルト。河田理事は福島には、それ以上の汚染地域もあるとみる。
一方、事故から長時間たち、放射性物質が20~40センチまで沈み込んで水に溶け出しにくくなっているナロジチと比べ、事故直後の福島は表面に集中しており、植物に吸収されやすいことが期待できるという。
河田理事は「汚染度に応じたきめ細かい対応が必要だ」と指摘。その上で、「実際に菜の花を植えるのは、茎や葉などの処理方法を決めてからだ。いずれにせよ放射性物質が深く沈み込む前に、早く取り組んだ方がよい」と話している。
農水省でも「一つの選択肢と思っている」(鹿野道彦農水相)と、データ収集などを急ぐことにしている。
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