安全な原発運営をしてもらいたいですし、ゆくゆくは脱原発ですね。
国内全17カ所の原発で東京電力福島第1原発級の事故が起きると想定して防災計画を見直す場合、避難を検討する対象人口が大幅に増えるとの試算を谷謙二・埼玉大准教授(人文地理学)がまとめた。現在、国や自治体の防災計画の対象は「半径10キロ圏内」だが、福島原発事故では約47キロ離れた福島県飯舘村が全員避難を前提とした「計画的避難区域」に指定された。全国の原発の地元では今後、防災態勢の充実が急務となる。仮に範囲を「50キロ圏内」に拡大すると、対象は全国で1200万人を超え、避難場所や非常用食料の確保などコストを伴う課題も予想される。
国は内閣府原子力安全委員会が定めた防災指針に基づき、原発からおおむね10キロ圏内を「防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲」(EPZ)と定めている。自治体もそれに沿って原子力防災計画を立て、住民への周知や避難場所の確保、被ばくを抑えるヨウ素剤備蓄などを進め、避難訓練も実施してきた。
ところが福島第1の事故の場合、政府は事故翌日の3月12日に20キロ圏内を「避難指示区域」に指定。4月には「警戒区域」に切り替える一方、最大47キロ離れた飯舘村などを「計画的避難区域」に指定して避難を呼び掛けている。放射性物質が長期間、大規模に漏れる事故は従来想定されなかったため、全国的にも原発10キロ以遠の正確な人口を把握していない自治体が多い。
谷准教授は、05年国勢調査の人口データに基づき、原発周辺の人口を500メートル四方ごとに集計、各原発からの距離別に算出した。その結果、現行の「10キロ圏内」に居住する全人口は合計71万人(推計)だが、「50キロ圏内」では1207万人(425万世帯)と17倍にふくれ上がった。
50キロ圏の人口が最多だったのは中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)で約214万人。10キロ圏内人口は約7万5000人だが、20キロ圏内は約21万5000人。50キロ圏内では県内最大の人口を抱える浜松市の中心部(約40キロ)や静岡市中心部(約50キロ)が含まれるため急増する。同様に、水戸市中心部が20キロ圏内にある日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)が約149万人(10キロ圏は約22万4000人)、40キロ東に福岡市のベッドタウンがある九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)は約148万人(10キロ圏は約2万8000人)などとなった。
現時点で国がEPZを見直す動きはないが、原発の地元では住民の不安を受け、対象を広げる自治体もある。関西電力高浜原発(福井県高浜町)などに近い京都府は、EPZを独自に「20キロ圏内」に拡大、放射線の観測所を倍増するほか、被ばく医療機関の指定追加も検討している。鳥取県は中国電力島根原発(松江市)の20キロ圏内に境港市、30キロ圏内に米子市が含まれているため、従来の県の防災計画とは別に、原発からの避難に特化した計画を来年1月までにまとめる方針だ。
防災計画の見直しに伴って、自治体によっては新たに数十万人単位の集団避難先確保や避難訓練の実施を求められることになる。
◇EPZ(EmergencyPlanningZone)
「防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲」を意味する英語の頭文字。原子力安全委員会が80年に定めた「防災指針」によると、原発から8~10キロ圏内を指す。米スリーマイル島原発事故(79年)などを考慮し、放射性物質が放出されても累積放射線量が10ミリシーベルトに満たないことを目安に設定された。防災指針は、EPZ内で重点的に資材の準備や通信手段の確保、避難場所や避難経路の明示などを行うよう求めており、各自治体もこれに沿って防災計画を立てている。
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