言ってる事は、もっともなんだけど、お前に言われたくはないよ!!
かつてオウム真理教のスポークスマン役を果たし、現在は自ら興した宗教団体代表を務める上祐史浩氏が週刊誌で語った内容が話題を集めている。原発再稼働のデモや「政治を変えたい」との話を聞いても、「本当に変わりたいのか」と違和感があるそうだ。
「サリン作って」「死ぬ恐怖を抱えて革命しようと思った」オウムから見ると、今の原発再稼働反対デモを見ても「それで変われるわけないじゃん」となってしまうという。テロ犯罪を起こしたオウムの幹部だった上祐氏の発言だけに波紋を広げている。
■「デモしかやってない」のに世の中変われるわけない
1995年3月20日の地下鉄サリン事件を筆頭に、松本サリン事件や坂本堤弁護士一家殺害事件と、無差別テロや反社会的活動を重ねたオウム真理教。上祐氏は地下鉄サリン事件後に教団の「外報部長」として頻繁にマスコミに登場し、教団を擁護する発言を繰り返していた。現在は自ら設立した宗教団体「ひかりの輪」代表として、今もオウムの教祖だった麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚の教えの影響下にあるとされる「Aleph(アレフ)」とたもとを分かっている。
上祐氏と、写真家・文筆家の藤原新也氏のロング対談が掲載されたのは、「週刊プレイボーイ」2012年7月16日号だ。上祐氏のオウム入信のいきさつや麻原死刑囚の人物評を話す中、最後に現代社会の諸問題について語り合っている。ここで上祐氏は原発問題について触れた。たまたま見たテレビの討論番組で「反原発」が話題になっていたが、再稼働しなければ約3兆円のコストがかかると指摘された途端に「みんながスッと引いたように感じた」としたうえで、「結局、明確な決断を国民側ができない。だから政治家も決められない」と評した。
話は原発再稼働への抗議デモに及ぶ。「これほどデモをやっても再稼働が止められない、政治が変わらない」との不満があるということに対して、上祐氏は「それぐらいしか変えようと思っていないのでは」と突き放す。さらに、かつてのオウムのように「サリン作って、炭疽菌作って、自分たちも死ぬ思いをして、死ぬ恐怖を抱えて革命しようと思った妄想で狂ってる人間たち」からすれば、「デモしかやってない」のにそれで世の中が変われるわけない、と切り捨てた。
「変わりたい」と言っているわりには、危険を冒し、火の粉が降りかかってでも意志を貫く覚悟も行動も見えない、と言いたげだ。
■「犯罪者がほざくな」も「悔しいが正しい」
もちろん、サリンを撒いて多数の犠牲を出したせい惨なテロ事件が肯定されるわけはない。上祐氏の発言も、オウムを正当化し、世の中を変えるためにテロ行為を推奨するためとは違う。この続きで上祐氏は、どうすれば政治や国が変われるかという話を聞いても「本当に変わりたいのか」と疑念を抱かざるを得ないとしたうえで、「誰かに委ねて楽に変わりたいということならば、それはオウムのように危険だなと」とまとめている。
ツイッターでも、ユーザーからの質問に対して「あの下りの主旨は、楽して安直に世の中を変えようとして、誰かに頼ると、オウムみたいになるという過去の教訓を表現したものです」と発言内容の意図を説明した。
オウム元幹部の口から出た刺激的な表現にネット上では、「またテロをする気か」「犯罪者がほざくな」と手厳しい批判が続出した。ただしデモに関する主張は、「説得力がある」「悔しいが正しい」「確かに心の底から原発再稼働に反対しているのはごくわずかだと思う」と理解を示す意見もあった。
とはいえ、発言自体が「正論」と受け止められても、当の本人に対しては今も「テロリスト」「反社会勢力」のレッテルが消えない。上祐氏は、地下鉄サリン事件が起きた当時は教団の「ロシア支部」に派遣されており、直接テロに関与していない。麻原死刑囚や実行犯のように極刑が下されなかったのも、そのためだ。だが、6月17日に放送された「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ)にゲスト出演すると、地下鉄サリン以後に帰国して「外報部長」に就任し、マスコミに向けて教団のかかわりを否定し続けていた際にも「やったことは間違いないと思っていた」と発言した。坂本弁護士一家殺害事件についても、「教祖から関与をほのめかされた」と、やはりオウムの犯罪を認識していたことを明かした。続けて「当時は教祖の麻原(死刑囚)を盲信していた」と弁解、積極的に教団を告発する側に回ることはなかった。
これにはパネラーで参加していた報道カメラマンの宮嶋茂樹氏が激怒した。上祐氏に向かって「あなたは、(坂本弁護士を)必死に探す母親を嘲笑し、罵倒し、宗教弾圧だと言い続けた。それを『マインドコントロールされていたから』のひと言で片づけるのは許しがたい」と怒りをぶつけていた。
公安調査庁によると、上祐氏が設立した「ひかりの輪」や「アレフ」の入信者は現在約1500人という。特に「アレフ」は「麻原回帰」がささやかれる。上祐氏は、かつて自身が神秘体験を通じてオウムにはまりこんでいった経験から、安易に「麻原信仰」に走ろうとする若者に向けて「神秘体験は解脱ではない」と警鐘を鳴らした。
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