各社の協力があって、計画停電も今のところ回避できているのですね。知りませんでした。
東日本大震災で東京電力の福島第1原発が深刻な事故を起こし、茨城県などの火力発電所も被災して止まった。計画停電が実施され、首都圏の市民生活や生産活動も根底から揺さぶられた。その陰で、千葉県湾岸部の大手鉄鋼メーカーが自前の火力発電所をフル稼働させ、電力供給に貢献していた。
「おかしいぞ」。JFEスチール東日本製鉄所千葉地区(千葉市中央区)の藤井良基・エネルギー部長らは震災発生の直後、異変に気づいた。大きな揺れは収まったが、送電線を流れる電気の周波数が通常の50ヘルツから49ヘルツに下がっていた。東電が無傷の発電所をフル稼働させるまでの数分間、低下が続いた。
「07年の中越沖地震で柏崎刈羽原発が停止した時も周波数の低下はあったが、わずか数秒だった。大規模な電力不足が起きているとすぐにわかった」
工場内には、自前の火力発電所が二つある。一方は製鉄工程に電力を供給し、もう一方は東電に電気を売る「売電」専用。同社は「電力卸売事業者」でもある。売電用は普段、平日の日中12時間のみ動かしている。
異常を察知した藤井さんらは即座に「売電量を3倍に増やす」と東電に申し入れ、震災の日の夜には了解を得て休日を含め24時間フル稼働させることにした。各部門の社員を再編成して売電部門の人員を25%増やし、3交代の勤務シフトを作成。設備がフル稼働に耐えられるかどうか確認したうえで、翌12日昼から現在まで能力の限界に近い38万キロワットの電力を供給し続けている。
同県君津市の新日本製鉄君津製鉄所も、東電と共同運営する火力発電所(最大発電能力約100万キロワット)を持っている。震災後、日中の製鉄工程の稼働率を落とすとともに、製鉄の副産物として生まれるガスを優先的に発電所の燃料に供給している。東電への電力供給能力は約50万キロワット。その最大出力で発電を続けているという。
2社の電力供給能力は計88万キロワットでほぼ原発1基分。一般家庭に送ると約26万世帯分になる。計画停電で鉄道の運休が相次ぎ、病院が自家発電への切り替えに追われるなど、各所で混乱が生じたが、2社の協力がなければ、混乱はさらに大きかったかもしれない。
新日鉄君津の広報は「節電とともに、供給面でも最大限協力していく」と言う。東電も「各社の素早い動きは非常にありがたい」と感謝している。
気温の上昇で暖房器具などの電力需要が低下することが見込まれることもあり、計画停電は「原則不実施」となった。だが、本当の試練は冷房が動く夏場に来る。東電はガスタービン発電の増設などの対策を打ち出しているが、猛暑に見舞われたら、電力需要は到底支えられない。
JFEスチールは発電所のメンテナンス作業を予定より早めて4月末~6月に集中実施し、夏場のフル稼働に向けて準備を進めるという。藤井さんは「電力需要が落ちる春の間に発電設備の体力を養い、夏場に引き続き貢献していきたい」と話す。
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