2012年9月30日日曜日

遺体と暮らすセルフネグレクターたち 年金目当て、腐臭漂う中で…

これからも、同じようなことが続くんだろうね・・・どうにかできないものかね。

 親の死後も、遺体を自宅に放置し続ける「事件」が相次いでいる。ゴミ屋敷と化したアパートや民家で、次々と見つかる白骨化遺体。多くが「子供」もすでに高齢化した世帯だ。健康や安全を自ら損なう「セルフネグレクト」(自己放任)と呼ばれる高齢者の問題が注目され始めているが、同居していた親の死を放置、無視し、腐臭ただようなか親の年金などを頼りに日常生活を送ろうとする高齢者たちも、各地で続出している現状がある。

■生きていれば100歳

 「入院か、どこか施設に入っているのだと思っていた」と近所の人はいう。

 生きていれば、100歳になっていたはずの母は、アパート1階の部屋で布団に寝かされたまま、白骨化した状態で見つかった。

 京都府警伏見署は9月、実母の病死を隠し、恩給を不正に受給していたとして、詐欺容疑で70歳の娘を逮捕した。同居していた孫=今年2月、41歳で病死=も容疑者死亡のまま、書類送検する方針だ。

 2人が遺体と生活していた木造アパートは、稲荷神社の総本宮で、数千本の鳥居で知られる伏見稲荷大社にほど近い、閑静な住宅街にある。

 アパートには、すでに入居者はおらず、近く取り壊される予定だ。「3人」で住んでいた一室には4畳と6畳の2部屋があり、母は奥の6畳の部屋に寝かせられ、自身と娘は狭い方の4畳の部屋で生活していた。

 捜査関係者によると、娘は逮捕直後、母の遺体を放置した理由について「生き返ると思っていた」と話していたというが、後日供述を撤回した。

 放置の理由を追及され、思わずついた狂言だったらしい。その後「恩給をもらえなくなったら生活に困った」と供述し始めた。

■少ししか開けないドア

 府警によると、母が93歳で死んだのは平成15年4月とみられる。そこから、遺体と2人の7年にわたる“日常生活”が続いた。

 近所で民生委員を務める女性は「お母さんへの敬老助成金などを持っていくと、言葉少なに『母は元気です』と言っていた。いつもドアを少ししか開けなかったが、あの奥で白骨化していたなんて」と話す。

 「何か新興宗教に入っていたようだ」と話す住民もいるが、正確なことはわからない。

 府警幹部によると「気温にもよるが、白骨化するには半年もあれば十分。空気に触れていると腐敗の進みははやい」という。ただ、人の遺体は腐敗するにつれ、強烈な腐臭を伴う。

 住民の間でもその臭いを指摘する声は出ていた。「排水溝が詰まったのか」「畑にまいた油かすが腐ったのでは」…。臭いが近所に漏れることを気にしたのか、娘は、夏でもいつも窓を閉め切っていた。

 「何度か会ったことがあるがあいさつくらいしかしたことがない」。町内の行事にはほとんど参加せず、時々、孫娘と2人で外出する姿が見かけられる程度。近所からは完全に孤立した存在だった。

 これまでの捜査では、殺人の疑いは低く、死体遺棄罪の公訴時効(3年)もすでに成立しているとみられている。府警は、年金の不正受給については、証拠が不十分で立件には至らず、恩給の不正受給についてのみ、遺体発見から2年以上の歳月をかけてようやく立件した。

■発覚は弟にあてた手紙

 1遺体と2人の暮らしが崩れたのは22年3月、娘が弟にあてた一通の手紙がその端緒になった。離れて暮らしていた弟は、数年にわたって同居している姉に電話や手紙を書いては、母に「会いたい」と伝えていた。

 母の遺体と暮らしています-。それまでさまざまな理由をつけては母に会わせようとしなかった娘が、なぜ「もう断り切れない」と、弟に母の死を伝える手紙を書いたのか。

 府警幹部は「どこか、あきらめた部分があったのではないか」と推測する。

 同じ伏見区の別の民家では9月20日、「老夫婦の姿が見えない」と、近所の人からの相談を受けて駆けつけた伏見署員が、白骨化した2人の遺体を新たに発見している。

 女性とみられる遺体が民家の母屋にあったゴミの下から、男性とみられる遺体が離れの布団からそれぞれ見つかった。同署は、遺体は、この家に住む老夫婦とみてDNA鑑定などを行い、確認を急いでいる。

 同署によると、老夫婦は、生きていれば夫は100歳、妻は93歳。長女(71)、孫娘(39)の4人で暮らしていた。

 この老夫婦について、長女は「父は平成11年ごろ、母は昨年の2月に死んだ」と話しているという。

 2人が、なぜ自宅で白骨化遺体を放置したまま、暮らしを続けてきたのか。やりきれない捜査が、今も続いている。

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