2011年11月22日火曜日

今、話題の離婚式に行って来た!

江戸時代の方が離婚は多く行われていたと聞いたことがある。別に離婚するのは勝手だけど式にする必要あるの?富裕層を狙った新手の商法だね。




2011年11月某日、都内のとあるレストラン。ホイットニー・ヒューストンの『オールウェイズ・ラヴ・ユー』に乗せて、一組のカップルが入場してきた。男性は濃いグレーのスーツ。女性は青いワンピースに革のライダースジャケットという出で立ちだ。この日、ふたりは8年間の結婚生活にピリオドを打つべく、離婚式を開催したのだった。




 離婚式とは、一組の夫婦が離婚をするときに「再出発の決意」を家族や友人に向かって表明する式のことで、離婚式プランナー寺井広樹さんがプロデュースを始めたサービス。実は私自身、この7月に離婚したばかりなのだが、離婚式の存在は知ってはいたものの、離婚のときまでわざわざ式を挙げようとは思えなかった……。果たして、離婚式とは一体どんなものなのか。

 今回はちょうど100組目にあたる夫婦の離婚式だった。高校時代から付き合いを始め、2003年に結婚。8年の結婚生活の間に、7歳と5歳、2歳の3人の子どもを授かった。

 離婚式を提案したのは、旦那様。奥様から離婚を切り出され「12年の関係を紙切れ一枚で終わらせるのはあっけなさすぎる」と感じていたさなか、TVで離婚式を見て「けじめをつけるために」と離婚式の開催を奥様に打診した。旧婦の洋子さん(仮)は「最初はもちろん戸惑いました。大勢の人に自分たちの離婚のときを見守ってもらうなんて、普通は考えられないですよね…。でも2~3週間悩んで、新しいスタートをきるためにしてみてもいいのかもしれない、と離婚式をすることを決めました」

 式は旧郎旧婦の入場から始まる。ふたりが会場中央奥にしつらえられたソファに着席すると、司会進行を務める寺井さんが挨拶を始めた。「本日は旧郎旧婦の離婚式にお集まりいただき…」結婚式と同じような口上に、今日という日はふたりの門出を祝う会としてめでたいものなのだな、と頭では思ってみるのだけれど、会を覆う雰囲気はやはり結婚式とは決定的に違う。15名ばかり集った参列者はみな、どこかそわそわと落ち着かない様子で、主役の旧郎旧婦の表情も硬く、笑顔は少なめだ。

 寺井さんからふたりが離婚に至るまでの経緯が簡単に説明された後、裂人(さこうど)へとマイクが渡される。結婚式における仲人の挨拶の離婚式バージョンだ。今回、裂人に選ばれたのは旧郎旧婦の共通の友人。(とはいえ、実際にふたりの仲を引き裂くのに加担した訳ではもちろんない。)「ふたりのこれからを応援したい」といった趣旨のごく簡単な挨拶に、ぱらぱらと拍手が起こる。

 その後、今回の離婚にいたるまでに双方からの相談にのっていた旧郎旧婦の友人の男性が、友人代表のスピーチを行った。

「今日の離婚式は、どんな顔をして参加して、そしてふたりにどんな言葉をかけてあげればいいのか、正直わかりませんでした。けれど、それぞれの道に向かって前に歩き出そうとしているふたりの姿をみて、素直にこれからもふたりを応援したくなりました。こうして円満に離婚できるのも才能だと思います。僕の親も離婚したけれど、こんな式を挙げられる状況ではありませんした」と、率直な気持ちを吐露した。

 そしていよいよ、離婚届への署名捺印。参列者が見守る中、あらかじめ用意された離婚届に旧郎旧婦がそれぞれの署名をし、捺印。

 参列者全員に見えるよう、寺井さんは離婚届を高々と掲げた。「離婚後も、3人のお子さんをお二人で協力して育てることを誓いますか?」との問いに、声をそろえて「誓います」と答える旧郎旧婦。

 その後、最後の共同作業として結婚指輪がハンマーで叩き割られた。旧婦は「もったいないから」と指輪を質に入れるとのことで、この日は旧郎の指輪のみが用いられた。

 会場中央に用意された台の上に恭しく指輪が置かれ、ふたりの手に木製のハンマーが手渡される。寺井さんのかけ声とともに、ハンマーが勢い良く振り下ろされ、鈍い音が会場に響きわたる。ハンマーを上げると、ふたりの思い出の指輪はいびつなひょうたん形に姿を変えていた。見る果てもない姿に変わった指輪を掲げる旧郎も、それを見守る参列者も、みな、何とも言えない面持ちをしている。ここは拍手をするところなのか、笑うところなのか、それとも神妙な面持ちをすべき…?目の前で指輪をつぶされたのを目にしたショックも相まって、参列者の戸惑いはピークに達している印象だ。

 その後の会食の時間では、旧郎旧婦ふたりの12年間の軌跡を振り返るスライドショーが流された。高校の制服に身を包み、ふたりで無邪気に幸せそうにポーズをとっているプリクラから、子どもが生まれ、家族でディズニーランドに行ったときの写真まで何十枚という思い出の記録が音楽にのせて流れて行く。バックミュージックはT-BOLANの『Bye For Now』。切ないメロディと前向きな別れを歌った歌詞が、この日にふさわしい。

 いまだ遠慮がちではあるけれど、参列者もようやくリラックスをした様子で、めいめいに食事や会話を楽しみ始めた。参列者に、離婚式に参列した感想をたずねると「新たなスタートを応援したい」という前向きな声がほとんどだった。

 旧郎旧婦の友人の女性は「最初に離婚式をする、と話を聞いたときは驚きました。そんな式があるということ自体知らなかったですし(笑)」と語りながら、実際に参列してみての感想を「離婚をされると、周りはそのことに触れていいのか気を遣ってしまいますよね。でも、離婚をすることはあくまで前向きな決断で、これからもふたりで新しい絆を創っていくんだよ、ということを周囲にも認めてほしい、って思いがきっとあって、この式を開いたんだろうな、と感じました」と語った。

 一方で、会場で唯一喪服に身を包んだ旧婦の親族の女性からは、こんな言葉も。

「新しいスタートという意味では、今日は始まりの日ですよね。だけど、結婚生活という意味では、今日は終わりの日。新しいことを始めるときはついそちらにばかり注目が集まりがちだけれど、私はあえて『終わり』に意識を向けて喪服にしてみました。8年の結婚生活を経て、いったい何が終わったのか。ハレでもケでもない、この離婚式という場で、これまでの反省もふまえてそのことに思いを馳せることは大事なことなのかなと思います」と語った。

 一連の式を終え、会場を後にするふたりの顔は、入場時よりもはればれとしていた。

 この日は、ふたりの離婚式のあと、100組の挙式を記念して、離婚がえるへの目入れと離婚式ソングが披露された。今後は離婚式を挙げた方を対象にしたマッチングサービスも開始するのだとか。

  2分5秒に1組の夫婦が離婚する現在。離婚式は、それぞれが前向きに人生を歩んで行くための別れを祝う新しい儀式として、その役目を担っているようだった。今日11月22日はいい夫婦の日。別れを祝う離婚式を挙げられるのは、ある意味“いい夫婦”でないとできないことなのかもしれない。

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