2011年11月5日土曜日

京都「歩くまち」へ タクシー細る秋 業界危機感「どこ走れば…」

あちらがたてばこちらがたたず。共存はなかなか難しいですね。


 ■ドル箱・四条通2車線減案 乗り場統廃合浮上

 観光都市の京都市で、タクシーが受難の時を迎えている。JR京都駅で今秋、渋滞解消に向けて乗り入れ規制が決まったうえ、「歩くまち」の理念を掲げた市が、中心市街地の四条通の車線数減少を打ち出し、乗り場の統廃合が浮上したからだ。“ドル箱地帯”からの排除を危惧するタクシー業界には「死活問題」との反発も渦巻く。古都を舞台に、観光客の足をめぐるバトルが過熱している。

 京都市内は約8850台のタクシーがしのぎを削る激戦区。三方を山に囲まれる狭い盆地で碁盤目状の構造のため迂回(うかい)路がなく、幅が狭い道も多いことから渋滞が発生しやすい。特にJR京都駅と、市街地を東西に貫く市内最大の繁華街・四条通は客待ちのタクシーが引き起こす渋滞が長年の課題になっている。

 住民からの苦情を受け、業界団体とJR西日本は10月、京都駅烏丸口で空車タクシーの乗り入れ規制の社会実験を実施。12月以降、ナンバー末尾の数字で3グループに分け、進入できる車両を日ごとに分散する仕組みを本格的に導入する方針を決めた。

 ◆「歩道拡幅は起爆剤」

 一方、京都駅に進入できないタクシーが流入するとみられる四条通にも規制の波が押し寄せている。

 市は昨年1月、脱・車中心社会のモデル都市に向けた「歩くまち・京都」総合交通戦略を定め、四条通の歩道拡幅を明記。南北に交わる烏丸通から鴨川沿いの川端通まで約1・1キロ間の4車線を2車線に減らす方針を打ち出した。

 市は「歩道拡幅は観光の都市間競争に勝つための起爆剤になる」と強調。今年度内に都市計画決定と詳細設計に入る意向だが、タクシーの業界団体に対しては、現在6カ所ある乗り場の統廃合について「検討段階。少なくとも乗り降りはできるようにする」とのあいまいな説明にとどまっている。業界団体は「市の進め方は歩道拡幅ありきで乱暴」と反発し、なし崩し的に四条通から排除される-との疑念を強めている。

 京都タクシー業務センターは「仮に四条通を締め出されるとどこを走ればいいのか。2車線になれば周辺の道路が混雑するだけだ」と指摘する。個人タクシー互助協同組合も「不況で乗客が減っており、四条通で乗り場が確保されなければ運転手は厳しい。売り上げが落ちて食べていけなくなる」と危機感を募らせる。

 ◆高齢者や観光客は

 タクシー業界の反発に対して、市は「排除するつもりはないが…。全員が賛同する事業は難しい」と釈明する。ただ、観光客からも「どこでもすぐにタクシーを拾える環境がなくなると不安」との声が上がっており、市はまちづくりの理念と観光の利便性とのはざまで頭を悩ませている。

 金沢大の高山純一教授(交通計画)は「歩くまちの理念は間違っていないが、タクシーは高齢者らにとっても重要な移動手段なので折り合いをつける必要がある」としたうえで、「例えば拡幅した歩道の一部にタクシーのスペースを、離れた場所に待機場所を設け、スペースが空けば待機場所に伝わる仕組みを作るなど、観光都市にふさわしい交通対策を進めるべきだ」と提案している。

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